ヴードゥー教は、ハイチの宗教的秘密結社で、
アフリカから強制的に連れてこられた黒人達の土俗的信仰(魔術的、呪術的)と
キリスト教が結びついてできたものである。
この教団は、基本的にはキリスト教カトリックだが、
ありとあらゆる宗教が取り入れられており、
神々も複数存在し、その宗教体系や思想体系を整理するのは難しい。
つまり、ヴードゥー教にとって、キリスト教は取り込まれた一部分にすぎない。
ヴードゥー教をもっとも独創的にしているのは、なんといっても魔術的儀式だろう。
そのひとつが、「ダンバラ」という神の化身であるヘビを讃える儀式だ。
そしてもうひとつ、死者の蘇り、「ゾンビ」がある。
これはヴードゥーの司祭が行うもので、死体が腐る前に墓から掘り出し、
生き返らせるという超魔術的なものである。
そして奴隷として働かせるため、農園に売るのだ。
そのため、死人の家族は埋葬後、墓を暴かれないように見張る事もあるらしい。
なおゾンビを作る際には、「ゾンビ・パウダー」なるものが使用される。
主成分はフグ毒と同じもので、司祭によって代々受け継がれるため、詳細は不明だ。
普通に考えれば、覚醒剤や麻薬の一種で人間を仮死状態にし、
目覚めたところを生き返ったと主張するデモンストレーションのようなものだろう。
ただし、ヴードゥー教の司祭は、このような怪しげな魔術を使うだけではない。
実際には、病気治療などの医師的な働きをしたり、相談役となったりしながら、
人々の信仰を得てきた。
ちなみに、「ヴードゥー」は英語読みで、ハイチや西アフリカでは「ヴォドゥン」と呼ばれる。
信者は、アフリカの民間信仰まで含めると世界で5000万人にものぼる。