かつてヨーロッパで日本人が嫌がられた時期がありました。
その理由は、日本人観光客が「旅の恥はかき捨て」を地で行く行動を、
団体客として平気でしてしまったり、
日本のマスコミが露店を取材するのに、
断りもせずに勝手に商品を手に取ったりするなど、
ヨーロッパの「常識」に従わなかったことが要因です。
それでは、ヨーロッパ人は模範的な行動をとっているのでしょうか。
実は決してそんなことはないのです。
Seaviewがイギリスの大学院で学んだ際に、
「イギリス人の旅行する時の行動様式に問題がある」
ということを繰り返し担当教官から言われたことがあります。
というのも、イギリス人はリゾート地に行くのが大好きなのですが、
行き先に「イギリスと同じような設備」を求めてしまうのです。
このため、ギリシャやトルコに行っても、
イギリス人はお酒を飲み、クラブで踊るなど、
普段の楽しみ方の延長で滞在生活を楽しんでいるというのです。
これは、滞在国の文化を無視していることに他ならないので、
そんなことをするなら国内ですればいいのに、という意見もあるほどです。
日本でも、欧米の観光客が京都で舞妓さんを追っかけて、
普段の生活にまで影響が出ているという報道がありました。
自分の興味のためなら、節度を忘れて行動してしまうのは、
決して日本人だけの問題ではないことを、
意外なところで実証してしまう結果となりました。
このため、観光学ではビヘイビア(behaviour)を抜きにして、
研究を進めることはできなくなっています。
このビヘイビアは「行動様式」とか「生活態度」などの意味合いがあり、
国民性の一部として重要視されているのです。
日本人が海外で高い評価を受けるようになったのも、
過去に厳しい指摘を受けて、改善してきた成果です。
ヨーロッパ人も同様の指摘をこれから受けることになると思われます。
特に酒癖が悪く、フーリガンの態度に世界中が困惑しているイギリスは、
既に嫌がられている存在になってきているのが現状です。
どこの国でもそれぞれにマナーがあることを、
全世界の人々が理解しなくては、
観光振興に支障が出てくることになるでしょう。
そんな意味でも、観光学の必要性が叫ばれているのです。