幼い頃、6人の少年少女は仲の良い友だちだった。里山にある小屋を秘密基地にして集まり、「超平和バスターズ」を結成して遊ぶ。
しかし彼ら、宿海仁太(じんたん)、本間芽衣子(めんま)、安城鳴子(あなる)、松雪集(ゆきあつ)、鶴見知利子(つるこ)、久川鉄道(ぽっぽ)の人生は、"あの日"に歪む。とある出来事がきっかけで秘密基地を飛び出しためんまは、川に滑り落ちて死んでしまったのだ。
高校受験に失敗し、入学翌日から自室に引きこもりゲーム三昧の生活を過ごしているのは、当時、みんなのリーダーだった宿海仁太だ。今やその面影はない。
そんな彼の前に、夏の獣が現れる。その"獣"は、あの日に死んだ本間芽衣子の成長した姿をしていた。自分と同じ年齢にまで成長しためんまは、じんたん以外の人間には見えない。一体何故彼女は、今になって彼の前に現れたのか?その秘密が、かつての仲間たちとの関係を取り戻していく中で明らかになっていく。
埼玉県秩父市を舞台のモデルとして繰り広げられる、高校生たちの後悔と歪みと葛藤と、友情と愛情と未来を巡る青春群像ものだ。
その存在感は様々な形をとっているのだが、彼ら5人に共通して重要な人物だっためんまをキーとして、しかしそれがじんたんにしか見えないという状況が、何となく疎遠になっていた彼らの間に、丸裸の感情をぶつけ合う場を提供し、互いに傷つけあいながらも、あの日に失ったものを取り戻していく。
あの日の事件のきっかけは、子どもの頃ならばよくあるような小さなこと。何もなければ、良い思い出になるか、そもそも記憶にも残らない程度の事だった。しかしそれがきっかけで、仲間が一人死んでしまうという、絶対に忘れられない刻印が心に焼き付けられてしまったため、誰もが元のままではいられなくなってしまった。
そういう彼らの心情を、丁寧に、そして巧みな順番で明らかにしていくところが興味をそそる。それに、エンディングテーマのZONE「secret base〜君がくれたもの〜」も、物語の内容にピッタリの選曲となっているところも興味深い。
もう忘れてしまったような感情を鮮やかに浮き上がらせてくれるところが、人気の秘密だったのではないだろうか?