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Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)全24回

◇評価 10ポイント
◇閲覧回数 13,185
◇登録日
2011年12月5日
くまくま
くまくま
道場主

Lv.12

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 秋葉原にあるとある雑居ビルの二階には、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真のラボがある…しかしその正体は、電気通信大学の学生、岡部倫太郎、重度の中二病患者だ。このラボにはラボメンが他に二人いる。ラボメンNo.2は椎名まゆり、自称がまゆしぃ☆の女子高生。ラボメンNo.3は橋田至、通称ダルのスーパーハッカーだ。
 そんな岡部とダルが作り上げた未来ガジェット8号、電話レンジ(仮)。名前の通り、電話を通じた遠隔操作機能を付加した電子レンジで、まゆりのからあげくんを温めるしか役に立たないと思われた発明が、偶然、タイムマシンの機能を持ってしまったことで、未来と過去を巻き込んだ壮大な物語へと発展していく。

 その中で重要な役割を果たすのが、天才物理学者の女子高生、牧瀬紅莉栖だ。偶然の出会いから彼女もラボメンとなり、彼女が電話レンジ(仮)を改良することで、過去へ送るメール「Dメール」、記憶を過去へと送る「タイムリープマシン」となり、SERNの陰謀に巻き込まれていくことになるのだ。
 他にもラボメンとなるヒロインは何人もいる。携帯メールでしか会話できない対人恐怖症の閃光の指圧師・桐生萌郁、謎めいた言動をするぶらうん管工房のバイト戦士・阿万音鈴羽、柳林神社の神主の子ども・漆原るか、秋葉のメイドカフェのオーナー・フェイリスこと秋葉留未穂らだ。彼女たちもDメールを使うことで、その運命がねじ曲がっていく。

 その結果として陥ってしまう、岡部倫太郎にとっての絶望の世界線。どれだけやり直しをしても、必ず世界が椎名まゆりを殺す。その世界線から脱出するため、牧瀬紅莉栖の協力を得て、何度も何度も後悔をしながらあがき続ける姿を描いた作品だ。





 この物語には、時間を繰り返すという特性上、ヒロインの入れ子構造がある。

 当然のことながら、一番のヒロイン候補は、椎名まゆりだ。彼女を死なせないために、岡部倫太郎は、気が狂いそうなほど同じ時間を繰り返し、それと同じ数だけ彼女の死を目の当たりにしながら、それでもあきらめずに、彼女が死ななくてもすむ世界線、つまり、過去の改変によって変化する未来を求める。
 だが、このまゆりが死ぬ世界線に至るまでには、Dメールによる過去改変で、何度も世界線は移り変わっている。それを引き起こしたのが、Dメールを送ったヒロイン候補たち、桐生萌郁、漆原るか、秋葉留未穂、そして若干例外だが、阿万音鈴羽だ。

 Dメールを送った時点では、彼女たちはヒロイン候補とは言えない。単に、メインキャラ周辺にいるサブキャラに過ぎない。だが、Dメールによって過去を改変し、彼女たちの理想の世界線に至った時点で、彼女たちはヒロイン候補に格上げされる。
 椎名まゆりが死なない世界線に至るためには、彼女たちの理想を壊し、Dメールを取り消させることで、ひとつずつ元の世界線に近づいていくしかない。この時、岡部倫太郎は否応なく、彼女たちの内面に踏み込み、その根源を解きほぐして、彼女たちに彼女たちの理想を諦めさせないといけない。いや、彼女たちに、それ以上の理想を与えなければならないのだ。そんな特別なことをする相手が、ヒロインでないはずがない。この場合のヒロインとは、主人公に特別な関心を持っている女性という意味なのだが…。

 そんなヒロインたちを乗り越えて来た先に待っているのが、最強のヒロインである牧瀬紅莉栖だ。彼女は、他のヒロインたちの世界線を移り変わるたびに、迷い悩む岡部の相談相手となり、彼の言葉を信じ、彼の進むべき道へと導くパートナーとなる。実は他のヒロインに真剣に向き合っている影で、紅莉栖と深い信頼関係を結んで行くのが岡部倫太郎という男なのだ。
 だが、椎名まゆりが死なない世界線では、牧瀬紅莉栖はラジ館で刺されて死んでいる。それが岡部の知っている事実だ。最強のヒロインを殺した先にしか、守るべきヒロインの生き残る道はない。数々のヒロインの理想を踏みにじってきた上で、今度はその命まで踏みにじる選択を強いられるのだ。

 それでも、この物語には救いがある。断腸の思いで決断し戻って来た世界線には、まだ希望が残されている。そう、この世界線が理想の世界線ではない。シュタインズ・ゲートと呼ばれる、全てが救われる世界線が存在するのだ。
 何度も時間を繰り返し、ヒロインたちを入れ子にすることで絆を結び、それが解けた先で初めて至ることのできる、全ての可能性が失われていない世界線。そんな希望の世界線には、犠牲と絶望の果てにしか至ることができないというのは皮肉というべきだろうか。いや、それが歴史というものなのだろう。彼らは何度も時間を繰り返すことで、長大な歴史を紡いだのだ。
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