2019年、人類は遥か宇宙の彼方からのメッセージを受け取った。それは「2035年に火星で会おう」というもの。その会合を実現するため、人類は国家の枠を超え、火星に人類を送り込むための組織・ST&RSを立ち上げた。
そして2033年、約束の日を二年後に控え、メッセージの年に生まれた少年少女が宇宙を目指し、宇宙飛行士を養成するための宇宙学校に入学する。
メッセージが届いた日、生まれて初めてしゃべった言葉が「火星」だという少年・白舟真帆も、宇宙学校を目指すひとりだ。幼なじみの星原めぐる、そして転校生の宙地渡と共に、宇宙学校日本校の選抜試験に臨む。
日本校の校長は、メッセージの発見者であるフィフィー・コリンズだ。彼女はあらゆるところに宇宙飛行士としての資質を試す問題を仕込み、そして実践的な課題を課す。合格率わずか1%未満の難関に、彼らは合格することが出来るのか?
というわけで珍しく宇宙もの。宇宙学校の生徒を描いた漫画としては「
ふたつのスピカ」が挙げられると思うが、あれとは少し違う。あちらは日本国産ロケットによる宇宙開発という部分にこだわりがあったが、こちらは国家の枠を超えたプロジェクトなのだ。その分、現実には達成困難な、理想的なプロジェクトでありすぎるきらいはあるが、しかし夢はでかい。
そして今巻では、真帆たちが、宇宙で必要とされる資質を試される、通常の試験にしては奇抜な、しかし宇宙で実際に必要とされる試験を課されることになる。
この試験のプロセスは、ストーリー展開上、若干、ご都合主義なところもある。例えば、最初の試験で真帆が作業者でなければ、彼らは脱落していた怖れもあっただろう。だからこの場合、事前に各々の役割が受験者に説明され、その上で彼らが自分たちに適した役割を選ぶという構成の方が、偶然性を排除できた気がする。しかしページ数やインパクト重視の演出の都合上、そうはしなかったのだろう。
また、宇宙という広大な場所で繰り広げられる物語なので、背景は細かいにしても、人物はもっと太い線で力強く表現して欲しいという個人的な望みもある。特に本誌で読むと、線が細すぎて読みづらいことも多い。繊細さとダイナミックさの両面をバランスよく使い分けてもらえたら、もっと嬉しいと思う。