COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)は最終日の10月29日、難航を極めた遺伝資源の利用と利益配分を定めた「名古屋議定書」について各国の意見を取り入れた議長案が提示され、30日に採択。遺伝子組み換え生物が生態系に被害を与えた場合の補償ルール「名古屋・クアラルンプール補足議定書」を既に採択しており、生物多様性を守るために二つの国際ルールと新たな国際目標を設定する歴史的な会合となった。
採択される議定書は、先住民の伝統的知識も含め遺伝資源の利用による利益を衡平に配分すると規定した。締約国は、遺伝資源を不正に入手していないか監視機関を設けて確認する義務が生じる。遺伝資源の入手には、提供国から事前の同意を得る必要がある。
途上国が主張していた利益配分の対象を議定書発効以前や植民地時代にさかのぼることは盛り込まれなかったが、代替措置として途上国に多国間で資金支援する枠組みを設ける。遺伝資源を加工した「派生物」は事実上、議定書の利益配分の対象から除外された。ウイルスなどの病原体についてはワクチン開発のための先進国の早急な利用を認め、適切な利益配分を求めた。
各国が議定書の議長案に同意したのを受け、難航していた新国際目標の議論も進んだ。新しい生態系保全の国際目標「ポスト2010年目標」(愛知ターゲット)は「2020年までに生物多様性の損失を止めるために効果的で早急な行動を取る」とし、焦点の保護地域については、陸域は少なくとも17%、海域は公海を含む少なくとも10%を保全するとの目標で合意した。
名古屋議定書の交渉をめぐっては、交渉官による協議不調を受け、議長の松本龍環境相が自ら議定書案を各国に提示、各国がこれに同意する過去に例のない事例となった。
交渉過程では、遺伝資源の利用国の先進国と、提供国のアフリカ諸国など途上国が激しく対立。議長案にもアフリカ勢が当初、反発したが、資金支援が盛り込まれたことなどを評価して受け入れに転じた。29日午後の全体会合で、松本議長は「議定書の採択はすべての国の悲願だ。各国の意見の相違に十分配慮して議長案を策定した」と呼びかけて締約国に受け入れを迫る場面もあった。
共同ニュース参照
コメントはまだありません。