金メダルを獲った内柴正人(30)。
日本柔道史上最年長の金で、日本柔道4人目の五輪連覇。
4歳の長男・輝(ひかる)くんに美しく光る世界一の証を掲げたヒーローが、
日本のメダルラッシュの幕開けを告げた。
「やっちゃいました。親父の仕事をしっかりやりました。前回は輝が生まれて、
妻が来られなかった。何度も辞めたいと思ったけど、
妻と子供を北京に連れていくんだと頑張りました。これで少しは恩を返せたかな」
アテネ五輪のときは乳児だった長男が、夫人のあかりさんの横に座り、
つぶらな瞳に父の雄姿を焼き付けている。
観客に肩車された息子に、祝福の拍手が飛ぶ。親子でつかんだ金メダルだった。
準々決勝ではシャリポフに有効を取られたが、残り26秒からともえ投げで
技あり、けさ固めで逆転勝ち。
試合前、独特のジャンプで体をほぐしながらリズムを整え、粘り勝ちを重ねた。
「北京五輪で王者になると、ずっと思っていました。
きょうを迎えて、夢じゃないと…」
4年前はオール一本で金。その後、国際舞台で優勝がなくなった。
国内大会では初戦負けなど、不振の極地。北京が絶望になりかけた昨年12月、
嘉納杯で2回戦敗退。控室へ戻る際、息子と目があった。
情けないパパのままでいいのか…。「ダメでもいいから常に全力で頑張ろう」。
取り戻した誇り。左右に動く体さばきのうち、苦手だった右への動きを改良した。
30歳での金は日本柔道史上最年長。
2大会連続金メダルは斉藤仁、野村忠宏、女子の谷亮子に次ぐ快挙だ。
「五輪は(4年間の)物語の一番強い人が勝たなくてはいけない試合。
僕が勝たないといけない、と思っていました」
引退を考え、失意にまみれ、そして家族の愛でよみがえった。
積み重ねた物語のエピローグが、キラキラと輝いた。