建安二十五年。曹操の跡を継いだ曹丕は、許都攻撃のため、三十万の軍勢を譙県まで南下させた。漢軍と魏軍が譙県の城門で対峙する。劉平は曹丕に、単独での話し合いを希望した。応じた曹丕が城壁に上ってくる。
曹丕は、父曹操の度量の大きさと気迫が足りないぶん、自分には権力が必要だと話した。それが夢を実現するためなのか、それとも野心を満足させるためなのか、曹丕自身も分からなかった。ただ父の愛を求め、認めてもらうために、いま敗けるわけにはいかない
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正直な曹丕の胸の内を聞いた劉平は、曹丕とは戦えないと答える。戦えば劉という姓の、ただの諸侯と変わりなくなる。この世に必要なのは名ではなく、平和的な統一だ。だから、本来なら存在しない皇帝である劉平は、戦えないのだ。
その言葉を聞いて、曹丕は劉平の前に跪く。
劉平は、曹丕に譲位した。
冕冠を玉座に置いた劉平を歓迎するように、天から光が射す。
寝殿へ帰った劉平を待っていたのは、曹節だった。封じられた山陽へ赴く劉平に、果実の甘煮を渡す。かつて司空府の中庭で、ふたりで食べたあの味だ。
劉平が山陽へ去ったあと、曹節は母のもとに戻るつもりだった。劉平と伏寿が落ち着いたころ、ふたりを訪ねると約束する
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皇宮の門前には、狩りの用意をした司馬懿が待っていた。
司馬懿は劉平が譲位することを、青州軍を彼に渡したときから分かっていた。たとえ絶対的な権力でもって曹丕を討ったとしても、曹氏を滅亡させることは出来ない。曹丕までいなくなることで分裂した曹氏の足元を見て諸侯が戦いを仕掛け、中原がまた戦乱の渦に巻き込まれるのは必至だ。それだけは避けなければならない。そのために曹丕のそばに居てくれるよう、司馬懿に頼む劉平だった。
皇帝としての使命を終えた劉平と、魏国の参謀である司馬懿は、もう二度と会うことは無いだろう。だが、別れの言葉は必要なかった。
山陽の邸宅に向かった劉平は、伏寿に再開した。司馬懿が唐瑛のために用意した邸宅は、山陽にあった。すべてが終わったのではなく、これから始まるのだ。
玉座の前で皇帝となったことを噛み締める曹丕の前に、曹節が現れた。代々の曹家に泥を塗ったとなじる。そして、一生、後悔と恐れを抱いた皇帝として生きるがいい、と玉璽を投げつけた。
転がった玉璽に飛びつく兄を見た曹節は絶望する。
ひとり孤独に玉璽を抱えた曹丕は、今は亡き父に叫んだ。この私が、玉璽を手に入れたのだ。
登基の儀式まであと二日となり、ここのところ体調の思わしくない曹丕は、医官に脈を診てもらった。
あと十年。以前受けた内傷で、曹丕の命はあと十年と宣告されてしまう。
許都の魏公府へ帰り、曹丕は庭で琴をつま弾く。琴の音に部屋から出てきた甄宓に、今まで悪かったと謝る。皇帝になれば自由に何でもできると、甄宓を喜ばそうとする。だが甄宓は、皇帝皇后の住まう洛陽の皇宮は、大きな鳥かごだと涙を流した。一挙手一投足、縛られて自由などない
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鄴城で一緒に走って逃げた、あの溌剌とした青年はもうどこにもいない、と曹丕に背を向けた。
黄初七年、魏の文帝曹丕が逝った。在位七年、享年三十九才。長子曹叡があとを継ぎ、司馬懿ら四人が幼い皇帝を補佐する。
曹丕の葬列が行く。遠くに、怪我をした山羊の手当てをする男性の姿が見えた。劉平だ。
司馬懿の隣に座る曹叡が、何を見ているのと聞く。司馬懿は、天下、と答えた。
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