歯周病をより早く、確実に治療できる薬が日本で開発され、一部の歯科医に大きな反響を呼んでいる。2017年11月から保険適用になったが、薬価が高いことや処方するメリットがないとして、多くの歯科医は無関心なのが現実だ。藤野健正さん (医療法人社団きょうどう理事長) は「治るのを早める薬なので、歯科医にも患者さんにも知ってもらいたい」と、機会あるごとに訴えている。
歯科レントゲン
濃度を変えて歯科用薬に
この薬は歯周組織再生剤「リグロス」 (一般名「トラフェルミン」、科研製薬) 。主成分は線維芽細胞増殖因子と呼ばれるたんぱくで、骨や筋肉、脂肪細胞などの増殖や分化を促進、強力な血管新生作用があり、歯槽骨、歯根膜などの歯周組織を再生させる。遺伝子組換え技術で製造されている。科研製薬は2001年から床ずれや皮膚かいよう薬として販売してきたが、濃度を変えて歯科用薬にするのに成功した。
家庭用・歯科用超音波スケーラー
東京、千葉に 3つの診療所を持つきょうどう歯科グループは 7カ月で 200症例以上にリグロスを使用した。治療は簡単で、歯と歯肉間の歯周ポケット部のプラーク (歯垢) や歯石などを歯周外科手術で取り除いた後、歯槽骨の欠損部にリグロスを 1回、たっぷりと塗って縫い合わせる。2 週間後の抜糸時に経過観察すると、ほとんどの患者さんの歯周組織がしっかりし始め、その後、歯槽骨の再生がどんどん進み、特別な副作用も見られなかった。「正直のところ、これほど目ざましい効果があるとは思っていなかったので驚いている。患者さんのためにはぜひ使ってあげたい薬」と、藤野さん。
ただし、実際にはリグロスは広がりそうにない。歯周外科手術ができる歯科医が少ないうえ、従来の手術の 1.5倍から 2倍の時間がかかること、リグロスの販売価格に値引きがなく、歯科医にとってはこれまでより収益がマイナスになる可能性もある。また、最低でも薬価分 ( 1回約 2万円) だけ医療費は高くなることから、余裕のなさそうな患者さんには勧めにくい、などのためだ。「患者さんに効果を知ってもらい、選んでもらうのがいいのでは」と藤野さんは話している。
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