60年代から70年代にかけて、
アメリカン・ニューシネマの時代があった。
不安に喘ぐ不況の中、刹那的に生きる者に皆が共感をもった。
この作品はそんなアメリカン・ニューシネマの
先駆け的存在の作品である。
1930年代。
不況のアメリカに伝説的な二人の実在人物がいた。
クライド・バローとボニー・パーカーである。
二人はクライドの兄、兄嫁、C・W・モスの5人で
町から町へと渡り歩き、数々の強盗を繰り返す。
まるでゲームのように、次々と犯罪を犯す5人。
世間は彼らをまるでヒーローかのように騒ぐ中
日に日に増す、警察の追っ手から逃げる日々へと
変わっていく−
ラスト、町からの帰り道、共犯者C・W・モスの父に
止められ、静寂の中、鳥が飛び立つとともに
ボニーとクライドが警官から銃弾を浴び、倒れるシーン
(フェイ・ダナウェイは車から落ちないように、足を
シフトに固定していた)
が圧巻である。
この作品は当初「犯罪を美化する」と批判的な声もあった。
反面、劇中でも描かれているように、大恐慌時代に
土地や職を失って、流浪する人々が映し出され
いわば社会派映画としての評価も高かった。
彼らのように、不況の中から脱したいという
願望の現われだったのかもしれない。
俺たちに明日はない(BONNIE AND CLYDE)
1967年 アメリカ 112分
製作:ウォーレン・ベイティ
監督:アーサー・ペン
ウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ ジーン・ハックマン
エステル・パーソンズ マイケル・J・ポラード
第40回アカデミー賞
助演女優賞 エステル・パーソンズ
撮影賞
2部門受賞
この年のアカデミー授与式(1968年4月10日)は
キング牧師暗殺のため、黒人暴動を恐れ、2日間延期をした。