奈良は興福寺に納められている国宝 阿修羅像。
この像はなんとも言えない憂いを感じさせる表情を浮かべていますが、
その表情の裏には悲しき逸話が隠されていました。
阿修羅には美しい娘がいました。
ある日、女好きの帝釈天(天界の王)が阿修羅の愛娘を見そめ、
狼藉を働いてしまいます。
激怒した阿修羅!親としては当然でしょう。
彼は軍団を率いて帝釈天に正義の戦いを挑みます。
しかし相手は天界の王。その強さはパンパじゃありません。
阿修羅勢はまったくかなわず、負けてばかりです。
しかも皮肉なことに、あろうことか娘が
いつしか帝釈天と仲良くなってしまいます。
完全に立場を失った阿修羅の怒りは頂点に達します。
彼は戦いの鬼となり、帝釈天をいいとこまで追いつめたりもしますが、
結局天界から追放されてしまうという悲しい逸話です。
あの憂いを含んだ表情の裏には、
父親として戦わざるを得ない苦悩と憎しみの
悲しい秘密があったのです。