けがや病気を理由に日常生活が立ちゆかなくなった人を支援する障害年金。高齢化やうつ病など精神疾患の患者の増加で受給者数は年々増え、厚生労働省によると、二〇一六年度の受給者は二百十万人に上る。しかし、国の審査体制には不透明な部分が多く、不可解な理由で支給が減額されたり、打ち切られたりするケースが後を絶たない。「命綱」であるはずの制度の不備に翻弄(ほんろう)される人たちを追った。
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「なんで落ちてるん?」。二〇一六年十二月、大阪府岸和田市の主婦、滝谷香さん(36)は、日本年金機構から届いた封書に言葉を失った。1型糖尿病のため二十歳から受けてきた月約八万円の障害基礎年金を打ち切るとの通知だった。
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すぐ夫の和之さん(36)の携帯電話を鳴らした。「なんでまた突然?」。夫も絶句している。夫婦は長男の康馬(こうま)君(10)との三人家族。同じく1型糖尿病の和之さんの障害基礎年金約八万円と、パチンコ店のアルバイトで働く和之さんの二十万円弱の月給、そして、香さんの障害基礎年金で生活していた。香さんは生活費をどう切り詰めるかで頭がいっぱいになった。
1型糖尿病は、膵臓(すいぞう)のβ細胞が破壊され、血糖を抑制するインスリンが分泌されなくなる病気だ。若くして発症することが多く、原因は不明。生活習慣に原因がある2型糖尿病とは異なり、食生活や運動習慣では改善しない。毎日数回、インスリンを投与しないと生命を維持できず、逆にインスリンが効きすぎると、昏睡(こんすい)や意識障害を伴う重症低血糖に陥るおそれがある。1型患者を支援するNPO法人「日本IDDMネットワーク」(佐賀市)の井上龍夫理事長は「膵臓かβ細胞のある膵島の移植以外、根治療法はなく、一度発症すると改善することはない」と話す。
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