標準薬+マラリアの薬でがん細胞死滅 オートファジー機能を阻害、東京医科歯科大が発表
急性リンパ性白血病の治療で、既存の薬剤を組み合わせたところ、オートファジー(自食作用)の働きが阻害され、がん細胞が死滅するとの新たな研究成果が東京医科歯科大学のグループによって発表された。オートファジー研究では昨年、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞、その熱気が冷めやらぬうちに、オートファジー機能を標的とした今回の同研究が日本発で結実し、注目を集めている。(大家俊夫)
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●ドミノ倒しで攻撃
この研究は東京医科歯科大学難治疾患研究所の稲澤譲治教授(疾患バイオリソースセンター長)と井上純講師らによるもので、3月に国際科学雑誌「オンコジーン」に掲載された。
稲澤教授によると、小児の白血病で頻度が高い急性リンパ性白血病の治療において、「L−アスパラギナーゼ」が標準薬として使われている。
稲澤教授のグループは今回の研究で、L−アスパラギナーゼの生理作用をさらに詳細に調べた。その結果、同薬の投与で白血病細胞に起こるアスパラギンの不足は、細胞毒性として働くミトコンドリアの傷害と活性酸素の過剰を引き起こす。その時に活性化されたオートファジーによって傷害ミトコンドリアや活性酸素が除去され、同薬の治療効果が失われてしまうことを突き止めた。
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そこで、L−アスパラギナーゼの投与時に、オートファジーの働きを抑えることが知られているマラリア抗菌薬「クロロキン」を併用。その際、オートファジー活性が低下した白血病細胞では傷害ミトコンドリアや活性酸素が細胞内で蓄積することでDNA傷害が起こり、これが導火線となって細胞死誘導タンパク質のp53が活性化された。まるでドミノ倒しのようなメカニズムで「活性酸素−p53ループ」が形成され、がん細胞を効率的に死滅させることが分かった。
この併用効果は人の急性リンパ性白血病細胞を移植したマウスを用いた実験でも確認され、クロロキンを併用したマウスは、L−アスパラギナーゼ単独の投与のマウスよりも生存期間が長くなることが示された。
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