元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。
Q インプラントには抵抗があるので、入れ歯にしようと思いますが、保険と自費ではどんな違いがありますか。
A 総入れ歯を除いて、保険の入れ歯は基本的に金属製のバネを使いますので目立ちます。また、ベースに使用できる素材がレジン(プラスチック)しかないので、強度を持たせるためにある程 度の厚みが必要になります。残った歯にバネをかけるため負担もかかり、長年使うと入れ歯にしなければならない歯がどんどん増えてしまう可能性も出てきます。自己負担金が最大1万3000円程 度とリーズナブルに作れるものの、保険の入れ歯の問題点は、見た目と違和感と持ちです。こういったデメリットを解消するにはどうしても自費対応になってしまいます。代表的な例を挙げてご紹 介します。
見た目が気になる方は、「ノンクラスプ義歯」を選ぶ方が多いです。入れ歯のベース部分に弾力性のある特殊な樹脂を使用しており、バネに相当する部分まで同じ素材で作ることができます。薄 いピンク色なので歯肉となじみ、他人からは入れ歯だとほとんど気付かれません。
違和感が気になる場合は、ベースの部分に金属を使って強度を持たせる「金属床義歯」を使用することで、厚みをレジンの10分の1ぐらいにすることができます。食べ物の温度が適度に伝わって おいしく食べられますし、重さが出ると落ちやすい場所には軽いチタン合金を使用するなど、症例によって使用金属の工夫もできます。
歯科手術用照明LEDライト
「アタッチメント義歯」といって入れ歯を外れにくくする装置を使う方式もあります。例えば歯周病で弱ってきた歯を完全には抜かず、負担がかかる歯冠の部分を切断して歯根だけを残し細工を します。最もポピュラーな磁性アタッチメントは、入れ歯と歯根の両方に磁石を取り付け、磁力で外れないようにします。バネを使わないので見た目がきれいですし、歯根を残すことでかんだ感触 も伝わりやすいと言われています。ただし、頭部MRI検査で画像に影響が出ることもありますので、脳疾患の既往がある方などは担当医と相談してください。
その他「コーヌス・テレスコープ義歯」といって、残っている歯に金属冠をかぶせ、その上から入れ歯を装着する方法もあります。見た目や安定感だけでなく、残した歯の持ちが良いという利点 がありますが、高度なテクニックが要求されるため近年では取り扱う歯科医が限られます。
歯科用インプラント装置
差し歯等のかぶせ物や入れ歯は国家資格を持つ歯科技工士さんが作製しますが、日本の歯科技工レベルは世界に誇れる素晴らしさです。フィット感の良い入れ歯との出合いは、歯科医側の経験値 のみならず、歯科技工士さんが鍵を握っているといっても過言ではありません。実はこれが、今回のテーマで一番お伝えしたかったことでした。
◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモ ットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」
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