経済的に苦しい暮らしが子どもの健康に悪い影響を与え、しかも長期にわたる可能性があることが研究でわかってきた。社会で普通の生活を送るための十分なお金がない貧困状態の子どもは、6人に1人いるとされる。負の連鎖を断つため、困っている親子を見つけ、支援する仕組み作りの重要性を専門家は訴えている。
4月下旬、都内の民間施設。家計が苦しい家庭の子どもやその親に無料や低価格で食事を提供する「こども食堂」が開かれ、45人が訪れた。チキンのトマト煮や山菜のてんぷらなど約10種類が用意され、親子は好みの料理をトレイにとった。
小3の長男と来た母親は「野菜料理がおいしい。ほかの親子と会話が弾み、長男もよく食べる」と喜んだ
歯科技工用真空成型器 。普段の家庭での夕食はご飯とみそ汁に1品を添える程度。2人暮らしで食べきれないと困ると煮物やカレーはあまり作らず、料理の種類は限られるという。
厚生労働省の2015年の調査によると、乳幼児が野菜を毎日食べる割合は、ゆとりがある家庭の82%に対し、ゆとりがない家庭は75%と低い。一方、脂肪分や塩分の取りすぎにつながるファストフードを使う機会はゆとりがない家庭で多く、栄養のバランスが悪い様子がみられる。
医療機関の受診にも差がある。入院した子どもを調べた佛教大学などの研究によると、貧困世帯の子どもほどインフルエンザワクチンの接種率が低く、医療機関の受診を控える割合が高かった
歯科技工用真空成型器。また足立区の小学1年生のうち、虫歯や肥満の割合は生活が困難な世帯で高いという結果が同区の調査で出ている。
子ども時代の貧困状態は高齢期の心身に悪影響を及ぼす可能性もある。
国立成育医療研究センターなどの研究チームは、約1万5000人の高齢者を対象に買い物や食事の準備などを自分で行う自立度と、子ども時代の経済状態との関係を調べ、13年に発表した。子どもの頃の生活水準の低さは高齢期の自立度の低下に関係していた。
研究チームの千葉大教授の近藤克則さん(社会疫学)は、子どもの頃に身に付いた食習慣や生活習慣が大人になっても続くため、とみている。うつや心臓病などを発症しやすくなるなどの問題もあるという。
親子支援の仕組み大切
弱い立場にある子どもには、備わった力が出せるよう、周りが温かく関わっていくことが大事だ。
こども食堂では、無口だった子どもが「全部食べてえらい」とほめられるうちに笑顔を見せるようになったという
歯科ハンドピース用 カートリッジ 。各地にある無料学習塾でも、勉強を教えてもらい、自信をつけていくケースが多い。
近藤さんは「勉強などで困難を乗り越えた経験が少ない子どもは何事も諦めがち。支援によって自己肯定感が高まると、様々なストレスに対応できるようになり、うつや心臓病のリスクを下げる効果も期待できる」と話す。
埋もれがちな貧困状態の親子を見つけて支援する取り組みも。長野県の健和会病院は、医師や窓口の職員が連携し、患者との会話から貧困の家庭を把握。「次の受診は給料日の後にしてほしい」などと聞けば、職員が生活の相談に乗る。
立教大学教授の湯沢直美さん(社会福祉学)は「医療機関に加え、健診の機会や保育園・学校などで貧困の家庭を見つけ、行政につなぐ仕組み作りは大切だ。親たちが安定した収入を得ながら時間の余裕を持って子育てできる環境を作っていく必要がある」と話している。
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