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「2016年春ドラマ」21作を視聴&ガチ採点! - 視聴率や俳優の人気は無視、本当に面白い作品はコレだ

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2016年5月5日
esjeen
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全21作品がそろった2016年の春ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていきます。
別記事(「2016年春ドラマ」傾向分析&オススメ5作発表! - 婚活、弁護士…なぜジャンルがかぶったのか?)において、春ドラマの主な傾向を[1]春らしい出会いと恋愛 [2]朝ドラヒロインが百花繚乱 [3]オリジナル脚本ありきの大勝負 [4]婚活、弁護士……まるかぶりの理由は? の4つと分析。
オススメドラマとして、『重版出来!』(TBS系 火曜22時)、『トットてれび』(NHK 土曜20時15分)、『ゆとりですがなにか DVD』(日本テレビ系 日曜22時30分)、『ラヴソング』(フジテレビ系 月曜21時)、『世界一難しい恋』(日本テレビ系 水曜22時)の5本を選びました。
本記事では、それらの作品を含む、今クール全作品のひと言コメントと採点(3点満点)を紹介していきます。
○『ラヴソング』 月曜21時〜 フジテレビ系
出演者:福山雅治、藤原さくら、水野美紀ほか
寸評:元ミュージシャンの再生と、孤独なヒロインの成長という2軸はいいが、そこに23歳差の"年の差恋愛"はトゥーマッチで、視聴者を困惑させた。いっそ師弟愛に振り切ったほうがよかった気もする。ナポレオンの村 DVD初演技の藤原は歌声に加え、感性を振り絞るような演技も見応えアリ。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆☆】
○『僕のヤバイ妻』 火曜22時〜 フジテレビ系
出演者:伊藤英明、木村佳乃、相武紗季ほか
寸評:初回の殺害計画と誘拐事件、身代金をめぐるジェットコースター的な展開は強烈だったが、裏を返せば出落ち感も……。今後は木村演じる妻を筆頭に、周囲の人物たちをどれだけ「ヤバく」描けるか。『サイレーン』のように、ツイッターやSNSへの着火がカギを握る。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『重版出来!』 火曜22時〜 TBS系
出演者:黒木華、オダギリジョー、坂口健太郎ほか
寸評:スポ根型のヒロインに既視感こそあるが、編集部員に加え、漫画家、営業部員、書店員とのやり取りは、職業ドラマの王道はぶらし/女友だち DVD。1人1人の喜怒哀楽を丁寧に描いているため、単なる出版の業界モノに留まらない魅力がある。黒木はもちろん手練れをそろえたキャストに大満足。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】
○『世界一難しい恋』 水曜22時〜 日本テレビ系
出演者:大野智、波瑠、北村一輝ほか
寸評:ラブコメ名手の金子茂樹らしい脱力した恋模様が笑いを誘う。大野と波瑠の組み合わせは鮮度十分で、回を追うごとに役をつかんだ感も。ゆるい世界観の中に、恋の核心を突くようなセリフがあるのもポイント。秘書の小池栄子と運転手の杉本哲太が見せる父母性が光る。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】
○『毒島ゆり子のせきらら日記』 水曜23時53分〜 TBS系
出演者:前田敦子、新井浩文、渡辺大知ほか
寸評:「恋愛依存症で二股が前提だが、不倫はしない」ヒロイン像、政治に「愛と裏切り」を絡めて成長をうながす筋書きは設定の妙。「深夜の昼ドラ」というコンセプト通り濡れ場満載だが、物語としても期待できそう。恋に揺れ続ける前田のモノローグは、妙なリアリティがある。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『鼠、江戸を疾る2』 木曜20時〜 NHK
出演者:滝沢秀明、青山美郷、高嶋政宏ほか
寸評:2年ぶりの第2弾も滝沢演じる鼠小僧は、愛にあふれてカッコイイ。色気だけでなく、アクションシーンも力強さを増した感がある。世界一難しい恋 DVD妹役の青山と下っ引き役の池田鉄洋など、新キャストも生き生き。「老若男女が楽しめるエンタメ時代劇」として同枠に最適な作品。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『警視庁・捜査一課長』 木曜20時〜 テレビ朝日系
出演者:内藤剛志、斉藤由貴、金田明夫ほか
寸評:『土ワイ』の2時間ドラマを連ドラ化。「キャリアの87%が刑事役」の内藤ほど、一課長が似合う俳優はいない。脇を固める斉藤と金田も含め、人情を通じた信頼関係を描く布陣は万全。初回は熊本地震当日で「途中打ち切り」の不運もあったが、実績があるだけにブレはなし。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
○『グッドパートナー 無敵の弁護士』 木曜21時〜 テレビ朝日系
出演者:竹野内豊、松雪泰子、杉本哲太ほか
寸評:弁護士ドラマかぶりも何のその、『HERO』を手がけた職人・福田靖の脚本だけに力負けの不安はゼロ。裁判の勝ち方も、元夫婦のやり取りも狙いすぎず、ほどよい塩梅に留まり、見る人を選ばない秀作に。弁護士やパラリーガルたちも多彩で、随所に小技が冴えている。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】
○『早子先生、結婚するって本当ですか?』 木曜22時〜 フジテレビ系
出演者:松下奈緒、貫地谷しほり、佐藤仁美ほか
寸評:松下はショートヘアだけでなく、変顔を連発するなど「新境地を開こう」という意欲十分。中江功監督らしい静かなトーンの世界観とのギャップを生み出しているが、視聴者に届いていない感も……。ベタな設定だけに、婚活よりも女性の人生にどうクローズアップするか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
○『ドクターカー』 木曜23時59分〜 日本テレビ系
出演者:剛力彩芽、中村俊介、笛木優子ほか
寸評:ヘリやシップはあったが、本格的なドクターカーは初めて。「限られた状況での発想力と判断力をどう描くか」がポイントになる点は変わらない。正義感に燃える新人医師と救命救急センター長の対立軸は、深夜らしくシンプル。シングルマザーの設定が枷になるリスクも。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】
○『ドクター調査班〜医療事故の闇を暴け〜』 金曜20時〜 テレビ東京系
出演者:谷原章介、中越典子、高畑淳子ほか
寸評:「架空組織『医療事故調査委員会』が真相に迫る」というコンセプトが斬新。医師が潜入調査するシーンは、「そんなことがあり得るのか?」というドラマならではのワクワクがある。「医療の暗部を暴く」クライマックスの痛快さは格別で、谷原がノリノリの演技を見せている。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』 金曜22時〜 TBS系
出演者:中谷美紀、藤木直人、瀬戸康史ほか
寸評:ディスられる美女を見るのも、藤木の毒舌にスカッとするのも、恋の理論を学ぶのもよし。未婚アラフォーの中谷をフィルターにすることで視聴者のハードルを下げている。「憧れの人」役に徳井義実を起用するなど、男性キャストを魅力的に描けていないのが気がかり。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『コントレール〜罪と恋』 金曜22時〜 NHK
出演者:石田ゆり子、井浦新、野際陽子ほか
寸評:安定の"大石静劇場(激情)"。脚本家のなかでも、ここまで禁断の恋を真正面から描けるのはこの人だけ。「薄幸美人」が板についた石田の色気は、同性からの支持も高く、キャスティングも的確。ヒロインをとりまく人々の猛反対が過激になるほど、評価が高まりそう。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『不機嫌な果実』 金曜23時15分〜 テレビ朝日系
出演者:栗山千明、市原隼人、稲垣吾郎ほか
寸評:20年ぶりの再ドラマ化は、想像以上にポップ。不倫に走る女性たちのモノローグも、稲垣の潔癖マザコン男ぶりも、多用されるBGMも、その罪を軽減させるような印象さえ受ける。不倫がクローズアップされる今年にピッタリの作品だが、現実の衝撃にどう打ち勝つのか。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
○『ナイトヒーロー NAOTO』 金曜24時12分〜 テレビ東京系
出演者:NAOTO、黒島結菜、木下ほうかほか
寸評:『ドラマ24』お得意のアイドルドラマだが、女性向けは異例。NAOTOが本人役、ソウルマンとして悪を成敗、EXILEメンバーも登場など、ファンサービスは徹底されている。物語性はほぼ排除されているため、ファン以外の楽しみは、ドS女子高生役の黒島のみか。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】
○『トットてれび』 土曜20時15分〜 NHK
出演者:満島ひかり、中村獅童、ミムラほか
寸評:笑い、涙、ミュージカル、ファッション。その全てからテレビ草創期の熱気を感じる文句なしの力作。自由かつ天然な黒柳をそつなく演じる満島の力に改めて気づかされる。森繁久彌、渥美清、坂本九、向田邦子ら故人とのやり取りも含め、井上剛の演出がキレキレの30分。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】
○『お迎えデス。』 土曜21時〜 日本テレビ系
出演者:福士蒼汰、土屋太鳳、鈴木亮平ほか
寸評:10代への訴求抜群な福士と土屋のコンビに勢い。幽霊と憑依をベースにしたマンガ原作らしい演出もフィットしている。とはいえ、人の死を扱う物語だけにヒューマン要素も強めで、毎話のゲストがキーマンに。福士の憑依や土屋の生足キックなど、ツイッターとも好相性。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『火の粉』 土曜23時40分〜 フジテレビ系
出演者:ユースケ・サンタマリア、優香、佐藤隆太ほか
寸評:昼ドラが終了した東海テレビが手がけるだけに、徹底して不穏なムードに包まれている。ユースケの見せる確信的な不気味さと、ただ翻弄される家族の描写は、他の枠にはないストレス過多な展開。我慢や理不尽を強いられるヒロイン像は、往年の連ドラを彷彿とさせる。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】
○『99.9%-刑事専門弁護士-』 日曜21時〜 TBS系
出演者:松本潤、榮倉奈々、香川照之ほか
寸評:弁護士ドラマのムードは薄めで、実質的には刑事ドラマ。法廷シーンや法律を駆使するシーンは少なく、事件の解明にクローズアップした潔さで高視聴率につなげた。松本と香川のコンビはいいコントラストで、片桐仁ら助演も効いているが、目新しさは感じられない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】
○『OUR HOUSE』 日曜21時〜 フジテレビ系
出演者:芦田愛菜、シャーロット・ケイト・フォックスほか
寸評:愛菜とシャーロットのW主演、野島伸司の脚本、山本耕史が現実と同じ「交際0日婚」の設定、オフコースの主題歌など、仕掛けがてんこ盛り。裏の『日曜劇場』が強大なだけに、新枠の立場からフルパワーの勝負に挑んだが、噛み合わず。子役たちが救いとなっている。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆】
○『ゆとりですがなにか』 日曜22時30分〜 日本テレビ系
出演者:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥ほか
寸評:脚本・宮藤官九郎×演出・水田伸生だけにオリジナリティは極めて高い。ゆとり世代の扱い方も多彩で、本人も周囲も全てのキャラに存在意義が見える。じわじわと心の奥に刺さるような名言も多く、明日の仕事が胸をよぎる日曜夜に、あえて社会派を選んだ勇気も称えたい。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】
■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20〜25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技 84』など。
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