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レーザー出力の向上道場

レーザー出力の向上道場

[カテゴリ]
学問・研究
[参加者]
0人
[昨日の見学者]
1人
[開設日]
2017年1月28日

[参加者]
laseronsa (道場主)

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理化学研究所(理研)光量子工学研究領域アト秒科学研究チームの小林徹専任研究員、クレイトン・ロック研究員、緑川克美チームリーダーらの研究チームは、奇数質量数のパラジウム同位体[1]に対し、従来法に比べて約10,000倍のイオン収量が得られる選択的励起イオン化法を開発しました。本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」(プログラム・マネージャー藤田玲子氏)の一環として実施されました。


原子力発電所の使用済み核燃料を再処理した際に発生する高レベル放射性廃棄物には、核分裂生成物としてパラジウム(Pd、原子番号46)やルテニウム(Ru、原子番号44)などの有用元素が含まれています。Pdにおいては、半減期の長い放射性同位体(長寿命核分裂生成物、LLFP[2])の107Pdと6種類の安定同位体(102Pd、104Pd、105Pd、106Pd、108Pd、110Pd)が存在します。Pdを資源化するために107Pdを除去する必要がありますが、同位体は化学的性質が似ているため、化学的手法で特定の同位体だけを分離抽出することは不可能です。また、「強力レーザーポインター同位体分離法」[3]は特定の同位体だけをイオン化して分離する方法ですが、パラジウムのように同位体シフト[4]の小さな元素には適用できません。この問題を解決するため1980年、Hao-Lin Chenらが「レーザー偶奇分離法」を開発し、奇数質量数のPd同位体(105Pd、107Pd)を選択的に励起イオン化することが可能になりました。しかしパラジウムを資源として十分な量を分離回収するためには、励起イオン化効率が低くイオン収量が少ないという課題がありました。


今回、研究チームは、自動イオン化準位[5]の利用および励起原子のイオンコア[6]統一という二つの分光学的考察に基づいた新しい励起スキームを採用することで、カラス撃退レーザー偶奇分離法を改良しました。その結果、奇数質量数の105Pdのイオン収量は従来の約10,000倍に増大しました。この方法は本来の目標物質である107Pdにも原理的には適用できます。また、本手法で分離される105Pdと107Pdは理研仁科加速器研究センターによる非放射化実験の試料として活用される予定です。


カラス撃退


また本手法は、ジルコニウム(Zr、原子番号40)やセレン(Se、原子番号34)など、他のLLFPへの応用も可能です。今後、パラジウムにおけるグリーンレーザー偶奇分離技術の実用化に向けた開発が“高レベル放射性廃棄物の資源化”という大きな目標への第一歩になると期待できます。


本成果は、日本の学会誌『JJAP Rapid Communication』(2016年11月24日号)に掲載されました。また、米国の科学雑誌『Applied Physics B』(2017年1月号)に掲載されるのに先立ち、オンライン版(12月28日付け)に掲載されました。


高レベル放射性廃棄物とは、原子力発電所の使用済核燃料からウラン(U)とプルトニウム(Pu)を分離回収した残余物のことで、核分裂生成物としてパラジウム(Pd、原子番号46)やルテニウム(Ru、原子番号44)といった種々の有用元素が含まれています。その量は高レベル放射性廃棄物1トン(1,000kg)当たり、Pdは1kg、Ruは2kgに達します。しかし、資源化を目的にPdを回収しても、それには放射性同位体107Pdが含まれています。107Pd以外の6種類のPd安定同位体(102Pd、104Pd、105Pd、106Pd、108Pd、110Pd)を資源化するためには107Pdを除去する必要があります。同位体は化学的性質が似ているため、一般に化学的手法で特定の同位体だけを分離抽出することは不可能です。また、1970年代に研究開発された「レーザー同位体分離法」は、イオン化によって特定の同位体だけを分離する方法ですが、パラジウムのように同位体シフトの小さな元素に対しては適用できません。


このようなパラジウムに関する問題を解決するため、1980年にローレンス・リバモア研究所のハオ-リン・チェンらが「レーザー偶奇分離法」を開発しました。イエローレーザー偶奇分離法では、照射するレーザーの偏光[7]を制御することにより、核スピン(原子核の全角運動量)[8]を持たない偶数質量数の同位体は励起イオン化されず、核スピンを持つ奇数質量数の同位体(105Pdと107Pd)を選択的に励起イオン化することが可能となります。この場合、目的の107Pdと同時に105Pdもイオン化されますが、それ以外の偶数質量数の同位体は資源化が可能です。レーザー偶奇分離法は原理的にはその有効性が実証されましたが、励起イオン化効率が低くイオン収量が少ないという課題があり、現在まで実用化に至っていません。


研究チームは今回、チェンらとは異なる励起スキームの採用によりレーザー偶奇分離法を改良し、奇数質量数のパラジウム同位体の励起イオン化効率の向上により、イオン収量を増加させることを試みました。


本研究により、従来のレーザーサイト偶奇分離法を改良することでパラジウムの奇数質量数同位体の選択的イオン化効率を大幅に向上できることが実証されました。将来的にレーザー偶奇分離技術を用いて高レベル放射性廃棄物中のパラジウムを資源化するには、単位時間当たりの試料原子のイオン収量の増大を実現するための、レーザー出力の向上が不可欠となります。


本手法で選択的イオン化される105Pdと107Pdは、理研仁科加速器研究センターによる非放射化実験の試料として活用される予定です。また、レーザー偶奇分離技術は、ジルコニウムやセレンの各放射性同位体(93Zr:原子番号40、半減期153万年、79Se:原子番号34、半減期29.5万年)など、他のLLFPへの応用も可能です。パラジウムにおける研究開発が今後、“高レベル放射性廃棄物の資源化”という大きな目標に踏み出す最初の一歩になると期待できます。


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